お客様事例SHIMA
「持続可能な食と働き方」を求めて厨房を見直し、
温度管理システムを導入
1階の物販スペース。左側の棚に米粉パン、冷蔵ショーケースに羊肉を並べます(開業前に撮影しました)
安心して食べることのできるメニューを、働く人にとっても優しい厨房から提供したい──。東京都町田市に開業した、米粉と羊肉を主体とする物販とダイニングの複合店「SHIMA」は、オーナーのそんな思いを形にした空間です。クラウドを利用した温度管理システム「キッチンリンク・クラウド」や、コンビオーブンやバリオデュアルパンといった最新機器の導入も、働く人の肉体的・心理的な負担を減らしながら、安全で質の高いメニューを提供するためだったと秋保明美社長はおっしゃいます。
米粉ベーカリー&羊肉の
物販・ダイニングの複合店
東京都町田市、多摩丘陵を走る鶴川街道沿いに2022年9月10日、米粉を使ったベーカリーとラム肉を主体とする物販スペースと、約30席のダイニングスペースで構成される「SHIMA」が開業しました。
経営主体の株式会社ふく家(や)は、東京の京王線沿線で、鮮魚店、鮮魚店兼惣菜店、居酒屋、秋田料理店、ジンギスカン料理店の計5店舗を運営してきました。SHIMAの出店は、開業前に経験なさった二つの出来事が大きく影響したそうです。
まずは、コロナ禍。「多くの人が、『この先、飲食はどうなっていくのだろう』と不安な気持ちになったと思います。私たちや従業員も、飲食業の先行きに不安な気持ちを持っていました。コロナ禍は確かにピンチではありましたが、その分、将来を考える時間もできました。ひとつの結論として、皆が安心して働ける場を新しく作ろうと考えました」──。秋保明美社長はこう振り返ります。
- 株式会社ふく家の秋保明美社長
もう一つが、秋保社長の弟である由岡政勝前社長が体調を崩したことでした。「私たちは幼い頃から家業の飲食店を手伝ってきました。会社を引っ張ってきた由岡が病気になって、『食べることにもっとも近い人間が、仕事に集中するあまり、忙しさにかまけて、自分たちの食事を一番おろそかにしてきたのではないか』と反省させられました。そこで、食というものをもう一度考え直してみようと思ったのです」(秋保社長)。
時を置かずに訪れた二つの大きな試練を前に、これまで展開してきた店を閉じて(1店舗はのれん分けによる経営権の譲渡)、業態転換という形で新業態のSHIMAを開業しようと決意なさったのだそうです。
働く人にも負担の少ない、
米粉パンという選択
秋保社長がおっしゃった「安心して働ける場」という言葉には、二つの意味が込められています。まずは、店の経営が持続し、株式会社ふく家で雇用している従業員が長く働き続けられるということ。もう一つが、高齢になったり、体調を崩した後に社会復帰を目指したりする従業員でも、働くことのできる環境を整えるということです。
「店を続けていると、例えば高齢になって以前のようにバリバリとは働けなくなる人が増えて来ます。そんな人たちにとって負担の少ないメニューを主体としたいと考えました」(秋保社長)。その一つが、米粉を使ったパンやタコスだったというわけです。「小麦粉のパンは、グルテンを出すために力を入れて生地を練る作業が不可欠です。これに対して、米粉のパンは、それほど力を必要とせず、発酵にも時間がかからないため、労働時間も相対的に少なくて済みます。加えて、小麦粉を使わないグルテンフリーのため、食べる人の消化器にも負担がかからないといわれています。負担のかかる仕事はできない従業員にとっても、食べる人にとっても、米粉パンは優しい食材といえます」と秋保社長はおっしゃいます。
ただ、株式会社ふく家にとって、米粉は初めて扱う食材であり、製パンも初挑戦の分野でした。ゼロから学習したそうです。fujimakが開催している調理のデモンストレーション「クッキングライブ」に足を運んだだけでなく、シェフやスタッフと一緒にfujimakのテストキッチンを訪れ、店舗で使用する予定の厨房機器を使いながら、冷凍生地やスクラッチの生地など、さまざまなケースを想定したオペレーションのシミュレーションを重ねたそうです。
「他のメニューを含め、fujimakのコーポレートシェフの方々が、私たちに寄り添ってくれました。特に、米粉パンのオペレーションについては、私たちがテストキッチンから帰った後も、何度も検証をしてくれました。後日、A4サイズの用紙12枚に及ぶレポートをいただいたときは、想像していた以上に詳細で丁寧な内容を見て、シェフたちと『これは頭が上がらないよね』と話したのを覚えています」(秋保社長)
SHIMAでは、国内産の米粉を使用した、グルテンフリーの「マルパン」のほか、「さばパン」「秋田ソーセージパン」「玄米パン」などの惣菜パンや、タコス類などを販売しています。小麦粉アレルギーの人でも来店できるよう、店内には小麦粉を一切置いていないそうです。
- 製パン室。コンビオーブン、テーブル型冷凍冷蔵庫のほか、冷凍生地からスクラッチ生地まで発酵をコントロールするドウコンディショナーを導入いただいています
- 米粉パンはコンビオーブンで焼成しています
生産履歴が確かで、自分たちが
「美味しい」と感じた羊肉を提供
- 無煙ロースターを設置した、店舗2階のダイニングスペース
もう一つのメニューの柱が、羊肉。秋保社長が英国大使館からの任命でプロモーションシェフを務めるウェールズ産ラムに加えて、アイスランド産ラム、フランス産マトン、太平山ポークが品揃えの主力です。羊肉は、以前から経営していたジンギスカン料理店の主力食材で、通信販売も手掛けていたアイテム。野菜とセットにした、しゃぶしゃぶやジンギスカン、バーベキュー用のミールセットを販売しています。
「自分たちが食べて美味しいと感じたもの、病気の身内に食べさせても安心できるものを出したかったのです。ラムについては、それまでラムを食べられなかった私たちが美味しいと感じたものを提供しています。羊肉にしろ、豚肉にしろ、共通しているのは、トレーサビリティがしっかりとしていること。誰がどのような育て方で作ったものかが分かっている肉を、食べる人に届けたいですね」(秋保社長)
店舗では、ミールセットを1階で販売するほか、羊肉を主体に構成した羊料理メニューや米粉タコスのメニューなどを、6テーブル・約30席を備えた2階のダイニングで提供しています。「食材が無駄にならないように、2階で提供する料理も、ミールセットとして販売している食材を使っています。アルコールなどを楽しむレストランとしてもご利用いただけますが、基本的には、1階で販売しているミールセットを、ご自宅で食べてもいいですし、味見を兼ねて、2階で召し上がってもいい、という考え方で運営しています」(秋保社長)。
キッチンリンク・クラウド採用の理由は、「温度管理も働く人に優しく」
SHIMAでは、温度管理のシステムとして、冷蔵庫などの庫内温度などをセンサーが読み取って、無線を通じてクラウド上に蓄積する「キッチンリンク・クラウド」を導入しておられます。「HACCPに対応した衛生管理を、働く人に負担のかからない、優しい形で実践するため」(秋保社長)だそうです。
「チェックリストを作って冷蔵庫などの温度管理をしても、人間のすることなので忘れてしまう場合もあります。小規模な店舗ですから、HACCAP対応の専任者を置くこともできません。また、商品の温度に万が一異常があったとき、その時に厨房にいた従業員は、いつも冷蔵庫の温度をチェックしているわけではないので、自分に落ち度がなくても責められたような気になりますし、その後もストレスになりますよね。キッチンリンク・クラウドであれば、庫内温度のデータが自動的に収集されてクラウドに飛びますので、記録忘れの心配がありませんし、クラウドということは、数値が社外のシステムに保管されます。つまり、店側でデータの改ざんができない分、正直にデータを記録していることの証にもなるはずです」(秋保社長)
- キッチンリンク・クラウドのシステム構成例。庫内の情報をセンサーが読み取り、クラウドに保存します。そのデータは離れた場所にあるパソコンなどにいつでも転送できます
- SHIMAのキッチンリンク・クラウド管理画面。クラウドを使用することで、ソフトウエアの更新やハードウエアの容量変更をする必要がなく、低コストで導入できます
- SHIMAの冷凍冷蔵庫に設置したキッチンリンク・クラウドのセンサー(囲み写真)と、通信用の親機(冷蔵庫上部)
- 厨房内の中継機(左)と温湿度センサー(右)
「fujimakの最新機器は人に優しい」
SHIMAの厨房設計はfujimakがお手伝いをさせていただきました。キッチンリンク・クラウド以外にもfujimak製品を多くお使いいただいています。中でも、秋保社長から高くご評価をいただいているのが、コンビオーブンと、バリオデュアルパンです。「どちらも、高齢者や、病気から社会復帰をして体力が落ちている人でも、料理を作る楽しみや仕事をする張り合いを感じながら、体への負担が少ない調理ができます」と秋保社長はおっしゃいます。
株式会社ふく家には、職人さんが第一線を退く前に残したレシピが数多くあるそうです。SHIMAでは、そのうちのいくつかをコンビオーブンのプログラム機能に記憶させ、活用しておられます。「材料は同じでも、どの素材をどのタイミングで入れるかは人それぞれ。味を一定にするのは難しいものです。コンビオーブンのプログラム機能では、何をどのタイミングで入れるかまで記憶し、アラームで投入タイミングを教えてくれるので、レシピを覚える必要がなく、誰が作っても味にブレがなくなります」と秋保社長。
煮る、焼く、炒める、揚げるに加え圧力調理もマルチにこなせるバリオデュアルパンは、働く人を重労働から解放し、かつ高い生産性を実現できる点が魅力だとおっしゃいます。「飲食店は大鍋や寸胴を使いますから、扱うもの一つひとつが、家庭での料理と違ってとても重いのです。体力が落ちて、大鍋を持てなくなって現場を離れる人もいます。その点、バリオデュアルパンは、パンの容量が大きく、素材を何度も鍋から移し替える手間が省けるので、重労働から解放されます。しかも、火力が強くて加熱も短時間で済みます。結果的に、これまで8時間かかっていた調理が1時間程度で終わるようになりました。自動給水の便利さも見逃せませんね。水を計量して鍋に入れるのって大変ですから。これには仕込み担当のスタッフが興奮していました」(秋保社長)。
- 1階の主厨房。バリオデュアルパン、コンビオーブン、ガスレンジなどが設置されています
また、高齢のスタッフがこれらの機器を使いこなせているのは、操作パネルなど、インターフェースが分かりやすくなっているためだと秋保社長は指摘なさいます。「最新の機械は、初めて触るときに『変な操作をして、壊してしまったらどうしよう』と躊躇するものです。コンビオーブンもバリオデュアルパンも、スマホの画面を操作するのと同じ要領で直感的に扱えますので、心理的なハードルが低いのです。そう、fujimakの機械は働く人に優しいと感じますね」(秋保社長)。人に優しい料理は、人に優しい厨房から生まれるのだということを、SHIMAの店づくりが教えてくれます。
関連製品・サービス
クラウド型 温度管理システム
「キッチンリンク・クラウド」
操作方法から新メニュー提案まで
「クッキングライブ」
コンビオーブン iCombi Pro
この製品について詳しくバリオ シリーズ/デュアルパン
この製品について詳しく