お客様事例JCHO湯河原病院

ニュークックチルシステムの導入で
労働環境の改善と患者満足度の向上を両立

左から調理師の藤沢様、管理栄養士の西山様、藤井様、調理師の加藤様

神奈川県湯河原町のJCHO湯河原病院は2020年の移転新築に伴い、患者給食にニュークックチルシステムを導入し、HACCP対応による安全性の向上、労働環境の改善、患者満足度の向上を実現しました。大病院での導入例が多い中、病床数150床で1回の平均食数120食という小規模病院でニュークックチルシステムを導入した意図と、成功の秘訣を伺いました。

移転新築に伴い、ニュークックチルシステムを導入

1946年に開設されたJCHO湯河原病院は、神奈川県湯河原町で旧湯河原厚生年金病院として地域の人々に医療サービスを提供してきた歴史ある病院です。2020年7月、施設の老朽化に伴い、町内の別の場所に建物を新築移転し、医療における地域包括ケアの拠点として新たなスタートを切りました。併せて、労働環境の改善と患者の満足度向上を目的として、朝食の調理・提供に、ニュークックチルシステムを導入しました。

成果の一部を先にご紹介すると、まず、食事に対する患者満足度が上昇。患者アンケートでは、給食を「美味しい」「とても美味しい」とする回答が、移転前の60%台から80%台へと跳ね上がりました。一方、朝食準備の早番調理スタッフの出勤時間を1時間遅くすることができ、労働環境改善と患者満足度向上を両立させることができました。

加熱機器だけでなく、冷蔵庫類もすべてfujimak製品です
再加熱カート。側面のパネルカラーにバリエーションがあり、各病棟のカラーに合わせているので栄養部門、看護部門の双方で間違えずに見分けることができます

限られた厨房面積でも「朝食のみ」に絞る

管理栄養士の藤井信也様
病院給食における調理・食事提供のシステム別フロー

クックチルシステムとは、加熱調理(芯温75℃以上)した食品を急速冷却し、チルド保存(0~3℃)した後に、喫食時間に合わせて再加熱(芯温75℃以上)して提供する、調理・保存システムの一種です。クックチルシステムのうち、急速冷却後、チルド状態で盛り付け(トレイメイク)をしておくフローを、特にニュークックチルシステムと呼んで区別しています(図「病院給食における調理・食事提供のシステム別フロー」を参照ください)。前日のうちに1人分ずつトレイに盛り付けし、再加熱カートにセットしておくと、翌日の朝食時間に合わせてタイマーで再加熱するため、早番スタッフの作業軽減につながります。病院給食など、早朝にも1人分ずつ食事を提供する給食施設などで普及が進んでいます。

JCHO湯河原病院がニュークックチルシステムの導入に踏み切った理由の一つは、盛り付け作業をあらかじめ行える点でした。栄養管理室でシステム導入を指揮した管理栄養士の藤井信也様はこう振り返ります。

「HACCPの義務化に象徴される食品衛生の厳格化、食における患者さんニーズへの対応、そして慢性的な調理師不足等々、問題は山積していて、病院給食も変化への対応が求められています。朝早くに炊飯器のスイッチを入れることから始まる早出業務や、冬場などの早朝勤務における心身の負担はとても大きいものでした。慢性的な人手不足が続く状況で、出勤時間を少しでも遅らせることが作業環境の改善と離職率低下につながると考え、時間と手間のかかる盛り付けを前日に済ませられるニュークックチルの導入に踏み切りました」

導入の目的をチーム内で共有

JCHO湯河原病院の場合、1回の提供食数は、常食、軟食、流動食、特別治療食の合計で約120食。対する厨房面積は栄養管理室の事務スペースを含めて200㎡強でした。「通常、ニュークックチル導入には、当院に当てはめると病床数150床の2倍の300㎡の厨房スペースが必要といわれていましたが、実際には200㎡程度が限界でした。1人分ずつ盛り付けたトレイを保存するチルド庫スペースは、1回転分が限度。そこで、作業環境が最もシビアな朝食だけ、ニュークックチルで対応することにしました」(藤井様)。

JCHO湯河原病院では、このスタイルを分かりやすく「朝だけニュークックチル」と呼んでいます。

一般的に、ニュークックチルシステムは大量調理の現場での業務省力化を想定したシステムです。

「導入前は、当院規模の小病院ではニュークックチル自体にメリットがないとまで言われましたし、朝だけニュークックチル運用の病院実績は皆無でしたから、プレッシャーは大きかったです。しかし、最初に栄養管理室のメンバー全員で話し合い、『何のためにニュークックチルを入れるのか』というコンセプトを共有したことで、スタッフ全員の前向きな姿勢が生まれ、この様な姿を通じて院長はじめ病院管理者の方々の理解を得ることもでき、システム導入を推進できた大きな要因となりました。また、導入初動段階での大きな混乱を少なくするために、当面は献立変更をしないなど、極力身の丈に合った無理のない運用を基本としたことで、スムーズに始動できました。尽力してくれたスタッフはもちろん、前例が無い事に理解を示して頂いた病院管理者の方々にも感謝しております」(藤井様)

(左)再加熱カートは、昼食と夕食時には設定温度を朝食の110℃から80℃に切り替えて、冷温蔵配膳車として活用。温冷吹き出し口のリバーシブル機能があるのでそれぞれ温・冷を切り替えて、夏場の冷やし麵など冷のスペースを多くとる献立も問題なく提供できます。また再加熱カート自体がコンパクト設計で幅をとらず、狭いスペースでも導入できました
(右)再加熱カートパネル部分(昼食を再加熱した想定でのデモ表示です)
(上)再加熱カートは、昼食と夕食時には設定温度を朝食の110℃から80℃に切り替えて、冷温蔵配膳車として活用。温冷吹き出し口のリバーシブル機能があるのでそれぞれ温・冷を切り替えて、夏場の冷やし麵など冷のスペースを多くとる献立も問題なく提供できます。また再加熱カート自体がコンパクト設計で幅をとらず、狭いスペースでも導入できました
(下)再加熱カートパネル部分(昼食を再加熱した想定でのデモ表示です)

人数が十分な午前中に翌朝分の調理を完了

JCHO湯河原病院では、朝食の調理は前日の午前中に終えるようにしています。これは朝食業務が軽減された早番調理師が考えた、自然な流れの業務手順となっています。

コンビオーブンやバリオシリーズで調理した主菜や副菜、汁物のほか、炊飯器で炊いたご飯などを2時間以内にHACCPに基づきブラストチラーで急速冷却します。これらを食器に盛り付けて1人分ずつトレイに並べ、シャトル(キャスターの付いた、再加熱カートの棚)にセットして、チルド室で保存します。そのシャトルを夕食配食後、空いた再加熱カートへセットし、タイマー設定しておけば、自動的に翌朝6時30分から約1時間の再加熱が始まり、ホカホカの朝食を病棟に届けることができます。

ニュークックチルシステムへのオペレーション変更によって、早朝勤務のスタッフ2人の出勤時間は、それまでの5時から6時へと1時間遅らせることができました。

「これまで、朝5時に出社をするには、遅くとも4時に起床しなければなりませんでした。今後も人手不足が想定される状況で、この早朝1時間の違いは非常に大きいです」(藤井様)

ブラストチラー&フリーザー
お茶などの飲み物もブラストチラーで急速冷却し、1人分ずつトレイにセットします

患者アンケートに感謝の言葉! 「美味しすぎてびっくり」

ニュークックチルシステム導入後、食事についての患者満足度は大きく上昇しています。冒頭で一部をご紹介したように、オペレーション変更後の患者アンケートでは、盛り付けに関する評価が「丁寧」「とても丁寧」の合計で92%、適温提供についても「温かい」「とても温かい」の合計が93%に達しています。総合評価に相当する美味しさは、「美味しい」「とても美味しい」が、それまでの平均60%台から80%台へと急上昇しました。

栄養管理室の皆さんにとって、さらに嬉しかったのは、数値だけでなく、アンケート結果と一緒に届くコメントだったそうです。「ホカホカで魚が生臭くなく美味しくなった」「お肉が柔らかく食べやすくなった」「食欲が増す温かさです」「美味しすぎてびっくり」──。

「以前では考えられない内容です。移転前は保温状態で提供していましたが、喫食前の再加熱となり、パワーの違いを感じます。つまり同じ献立でも、熱々で提供することで60点から80点に評価が跳ね上がるということです。ベッドサイドに行くと、患者さんの表情からも食事に対する満足度の高さを肌で感じることができます」(藤井様)

ニュークックチルシステムの導入に当たって、栄養管理室の皆さんは、「HACCP対応の厨房での衛生的なオペレーションによって食事の安全性を高め、スタッフの労働環境を改善しながら、患者満足度の高い食事を提供する」という目的に沿って、変えるべきものと変えてはならないものを丁寧に議論し、検証なさいました。

3月3日の昼食として提供したひな祭りメニュー

炊飯を例にとると、盛り付け方法の工夫などによって、熱風式再加熱カートでの一番の懸念事項であったご飯の乾燥を抑え、霧吹きなど特別な手間をかけずに味の劣化を防ぐことができました。効率を重視すればスチームコンベクションオーブンでの炊飯という選択肢もありますが、専用の炊飯器を使った炊飯にこだわったのは、食味の観点から譲れないと考えたためだそうです。

また、ニュークックチルシステムの導入で作業が平準化される分、調理に時間や手間をかけられるようになりました。「一例を挙げると、クリスマスに提供するビーフシチューは、事前に真空調理を取り入れて、国産から豪州産に肉を変更したにもかかわらず、国産に引けを取らない軟らかな仕上がりになりました。患者さんからは高評価をいただき、食材コストも削減できて一石二鳥です」(藤井様)。

精度の高い機器だから実現できたTT管理

JCHO湯河原病院の移転新築に伴う厨房の設計・施工はfujimakが担当しました。藤井様は、ニュークックチルシステムの導入は、食材や食品の衛生を担保できる適切な厨房の設計と、TT管理(加熱・冷却・保存の温度と時間の管理)に対応できる、信頼性の高い厨房機器があったからこそ可能だったと振り返ります。「設定した温度どおりに加熱や冷却ができることはもとより、調理スタッフがイメージどおりの仕上がりになったと実感できることが大事で、fujimakの機器はその精度がとても高いと感じます」(藤井様)。

最後に、fujimakの担当者へのご評価を伺いました。「私はかなり無理難題をぶつけた厄介なお客さんだったと思います。でも一つひとつ誠実に、レスポンス良く対応してくれました。また、アフターメンテナンスも手抜きすることなくしっかり取り組んでくれました」(藤井様)。

「バリオシリーズは、丸型の本体が多い回転釜と違って四角形ですので、デッドスペースがなく、限られた厨房面積を有効に使えます」(藤井様)
栄養管理室の管理栄養士と調理スタッフの皆さま

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施設名 独立行政法人地域医療機能推進機構 湯河原病院
所在地 神奈川県足柄下郡湯河原町中央2丁目21-6
電話 0465-63-2211
開設 1946年(2020年に移転)
診療科 整形外科、リウマチ科、形成外科、リハビリテーション科、脳神経外科、内科、消化器外科、産婦人科
Webサイト https://yugawara.jcho.go.jp/