お客様事例いすゞ自動車株式会社 本社

開放感あふれる、社員食堂の枠に留まらない
フレキシブルなコミュニティスペース

メニューの提供カウンター。横幅は全体でおよそ80mあります。冷蔵庫のある壁の奥側がメイン厨房です

2022年5月、本社を創業の地である東京・大森から横浜に移転した、いすゞ自動車株式会社に、「Yokohama Terrace」の愛称で従業員の皆さまに親しまれるスペースが誕生しました。3500平方メートルを超すフロアは多彩なゾーンで構成され、社員食堂としてだけでなく、コミュニケーションの場や、執務スペースとしても活用されています。新しい働き方を推進する場であることを受けて、fujimakも、省力化に貢献する次世代の機器類を初めて納入させていただきました。食器自動仕分けロボット「finibo(フィニーボ)」と、自走してフロアの離れた場所に食器類を運搬できる「自律移動搬送ワゴン」です。

「気兼ねなく集まり、
居場所が見つかるスペース」

2022年5月9日、東京・大森から、多くの関連会社とともに、横浜・みなとみらい地区の「横濱ゲートタワー」に本社を移転した、いすゞ自動車株式会社。その8階で、床面積3500平方メートル強、座席数640席の多目的スペース「Yokohama Terrace」が稼働を始めました。

いすゞ自動車株式会社や関連会社の従業員向けに1日およそ2000食の食事を提供するほか、新しい働き方として注目を集めているABW(Activity Based Working=仕事内容や気分に合わせて、働く場所や時間を自由に選ぶ働き方)に対応した執務スペースとしても利用できる空間です。

座席とカウンタースペース。明るい光が差し込む窓からは、横浜駅周辺の景色を望むことができます

「旧本社の社員食堂は食事をするためだけの場でしたが、就業者の増加に伴ってスペースが4倍に増えた新本社の食堂は、社内打ち合わせや、お客様との打ち合わせなど、多目的に活用することを前提に空間を設計していきました。食堂と呼ばず、Yokohama Terraceという愛称にしたのも、このためです」と、いすゞ自動車株式会社生産技術企画部プラントエンジニアグループの高橋拓生グループリーダーはおっしゃいます。

いすゞ自動車グループで不動産や空間設計を担ういすゞエステート株式会社で、本社移転の全体監理を担当した建築本部・設計建設部の藤井勉部長は、「プロジェクト発足当初から、『集う』というコンセプトを関係者で共有し、このスペースの在り方を議論してきました」と明かしてくださいました。「勤務地や所属に関係なく、グループの従業員が気兼ねなく集まり、所属の垣根を越えて交わる場所にしよう。そして、個人としても自分の居場所が見つかる場所を作ろうと考えたのです」(藤井部長)。

いすゞ自動車株式会社生産技術企画部プラントエンジニアグループの高橋拓生グループリーダー
いすゞエステート株式会社建築本部・設計建設部の藤井勉部長

フォルムや質感で
自動車メーカーを表現

フロアは変化に富んだ構成になっています。詳細設計の監理・監修を担当した株式会社坂倉建築研究所の園田啓介様は、「大テーブルを囲んで大人数で打ち合わせなどができるスペースや、一人で集中できるスペースなど、多様な利用動機や人数に対応できるよう、ゾーニングを工夫しました。座席を配置する床面には高低差もつけています。併せて、食事を提供するカウンターやケータリングカウンターを、車体の曲面をモチーフとした形状にするなど、自動車会社様の空間であることを意識したフォルムや質感を取り入れています」とおっしゃいます。

この発言を受け、藤井様がケータリングカウンターの上部で銀色に光る天井を示して、補足をしてくださいました。「いすゞ自動車の『いすゞ』は、伊勢神宮の内宮を流れる清流・五十鈴川に由来しています。この天井は、その五十鈴川の水面をモチーフとしています。市街地で営業するカフェテリアのような華やかさを求めるのではなく、いすゞ自動車のクルマづくりの思想である『質実剛健』のアイデンティティを現代的に表現しています」(藤井部長)。

ケータリング料理を並べるカウンターの上部には、五十鈴川の水面をモチーフにした天井を設置しています。バーカウンターとしても使えるよう、下部に椅子が組み込んであります
株式会社坂倉建築研究所の園田啓介様

冷蔵庫も落ち着いた質感に

カフェテリアレーンに面した冷蔵庫・温蔵庫。手前の光がさしている扉が、メイン厨房に通じる通路扉です。いずれも落ち着きのあるバイブレーション仕上げです

fujimakは、Yokohama Terraceの厨房設計、事務所内の造作カウンターもお手伝いし、厨房機器の多くを納入させていただきました。厨房も、特に利用者の目に触れる部分は空間のコンセプトに合わせた落ち着いた仕上がりになっています。カフェテリアの受け渡しレーンに設置した冷蔵庫・冷凍庫は、一般の仕様と異なり、扉など前面のステンレスにバイブレーション仕上げ(ステンレス表面にランダムな研磨模様をつけ、傷が目立たぬようにしたもの)が施されています。

「ステンレスの質感を生かしつつも、落ち着きがあって、とてもきれいですね。自動車会社ですから、利用者の多くがこうした素材に興味を持ちますし、実際に評判がいいです。メイン厨房から冷蔵庫類の横に通じる避難扉も同じバイブレーション仕上げで、冷蔵庫がもう一台並んでいるような外観にしています。空間に調和しつつ、遊び心があって、面白いと思います」(高橋様)

園田様は、「いすゞ自動車様からは、fujimakが設備協力をしたテレビドラマ『グランメゾン東京』のオープンキッチンのように、機能的ですっきりとした厨房にしたいとのご要望を頂戴し、fujimakとキャッチボールをしながら今の形になりました。大規模施設で、ご要望を見事に表現してくださったと思っています」とご評価くださいました。

次世代のデジタル機器で
省力化に貢献

実は、Yokohama Terraceでは、fujimakがお納めした2種類の次世代機器が、頼もしい裏方として活躍しています。

まずは食器洗浄エリア。機械学習(AI)やロボティクスの技術を活用し、洗浄後の食器を自動で仕分けるロボット「finibo(フィニーボ)」です。少子高齢化の進行に伴い、フードサービス業界では今後、人手不足の傾向がより顕著になるといわれています。食器洗浄機が排出する蒸気や熱気などで高温多湿になりがちな環境で立ち仕事が求められる食器の洗浄や仕分けは、特に担い手不足が懸念される職種の一つです。

fujimakはこうしたフードサービス業界の課題解決を図るため、食関連のハード・ソフトの開発企業であるTechMagic株式会社と共同で、finiboを開発しました。センサーが洗浄後にコンベア上を流れる食器の形状を読み取り、自動でピックアップと、仕分け・コンテナへの収納を行うものです。

「作業の課題解決に資する先進的な取り組みには積極的に協力したいとの思いがあり、fujimakの提案を採用することにしました。食器洗浄エリアに設置してあるため、利用者様の目に触れる機会がないものの、内覧会では、訪問者の多くが、この装置に興味津々でした。作業負荷が軽減され、作業効率は高まっていると聞きます」と、高橋様はおっしゃいます。

実際に運営されている給食委託会社様からは「finiboで洗浄室の省人化に役立っています」とご評価いただいています。

食器の自動仕分けロボット「finibo」。写真右の食器洗浄機から流れてきた洗浄済み食器をセンサーで認識し、糸底の水分を吹き飛ばしてからピックアップし、指定された方法で手前の回収コンベアに仕分けます

finiboで仕分けた後、ラックに収納した食器を、離れた場所にある食器消毒保管庫や、各収納に無人で運搬するのが、自律移動搬送ワゴン。事前に作成した目的地までの地図情報に従って、ラックに収納した最大70kg(床条件によります)の重量物を安全に無人で運搬します。走行ルートに想定外の障害物や人の飛び出しなどがあった場合は、センサーが認識し、その場で停止。障害物を避けて、人がいないことを確認してから走行を再開します。

自律移動搬送ワゴン。タブレットで操作するロボット(写真左)が、ワゴン(写真右)をけん引。ロボットとワゴンは切り離しが可能です

「Yokohama Terraceは厨房の横幅が、約80mあります。フロアの左右に配置された2つの洗浄エリアの片側から、反対側にも設置した食器保管庫や、各収納に食器を運搬する必要が生じましたので、このシステムの提案を採用しました。当社の工場では、専用レーンを行き来するAGV(自動搬送車)が稼働しています。仕組みは違いますが、自律移動搬送ワゴンも機能は同じなので、イメージはしやすかったです」(高橋様)

Yokohama Terraceでは、4台の自律移動搬送ワゴンが、ランチ営業終了後に、フロアを往復して食器を運んでいます。外形のデザインは、Yokohama Terraceの特別仕様。自動車のデザインなどを手がけておられるいすゞ自動車様のデザインセンターが、fujimakのオリジナル図面を基にホテルのコンシェルジュをイメージした愛くるしい見た目にデザインをしてくださいました。

コンシェルジュをイメージした4台の自律移動搬送ワゴンが活躍しています。外形の樹脂成型の部分をいすゞ自動車様のデザインセンターがデザインしてくださいました

「fujimakと仕事をして、
楽しかった」

今回、いすゞ自動車株式会社と関連会社の多くが入居したビルは、複合ビルで他のテナント等も入居しています。ビルが標準的に定めた仕様やスケジュールの枠組みの中で、自分たちにとって使い勝手がよく、かつ、自社のアイデンティティを尊重した空間を作り上げるまでには、数多くのご苦労があったそうです。「デザインも二転三転しましたが、でき上がってみると、これしかなかったような機能とデザインになったと思います。fujimakの担当者もとてもよく対応してくれました」と高橋様はおっしゃいます。

藤井様は、「fujimakは厨房機器メーカーという枠を超えて、建築側の事情を理解し、柔軟に対応をしてくれたのがありがたかったです。オフィスビルとしての施工スケジュールに合わせる形で、仕様も幾度となく変わりましたが、fujimakはゼネコンとの調整を含め、粘り強く仕事をしてくれました。fujimakの担当者と仕事をして楽しかったと率直に思います」とご評価くださいました。

園田様からも、「プランが変わると、フロアだけでなくて、厨房の設計も変わります。その度に、fujimakの担当者はすぐに対応してくだり、助かりました」とお言葉をいただきました。

お三方とも、「雰囲気がいいね」という利用者の声を聞くことが本当に嬉しいとおっしゃいます。Yokohama Terraceで多くの方々が英気を養い、交わり、豊かな発想を生み出し、いすゞ自動車株式会社らしい新たな製品やサービスが、今後も次々と世に送り出されていくことでしょう。

左からいすゞエステート株式会社の藤井部長、いすゞ自動車株式会社の高橋グループリーダー、株式会社坂倉建築研究所の園田様

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施設名 いすゞ自動車株式会社 本社
所在地 横浜市西区高島一丁目2番5号 横濱ゲートタワー
開設 2022年5月
Webサイト https://www.isuzu.co.jp/