お客様事例福岡大学病院
温かく、安全で、現場の
負担が軽くなる病院給食
福岡大学病院。ガラス張りの建物が中央棟で、左奥に新本館があります
福岡市の福岡大学病院は、2024年5月に開院した新本館の厨房で、ニュークックチルシステムによる食事の提供をスタートさせました。新しい厨房では、温かい食事を患者さんに安全に届けるための仕組み作りだけでなく、働く人の負担が軽くなる環境作りにも取り組んでおられます。
2カ所に分散していた
厨房を1カ所に集約
九州の医療を支える福岡大学病院(771床)の新本館が2024年4月に竣工し、同5月に開院しました。新本館は、地下1階、地上12階建て。屋上へリポートや、あらゆる感染防御に配慮した最新の機能など、高度な医療を提供するために必要なさまざまなインフラを有しています。
この新本館の開院に伴い、毎食550~600食を提供している患者給食の提供システムも、大きく変化しました。約50年前に建築された旧本館と2011年から稼働している中央棟に分散していた厨房を新本館の4階に集約し、ニュークックチルシステムを導入なさいました。ニュークックチルシステムとは、加熱調理後に急速冷却した食事を、チルド保存し、1人分ずつ盛り付けたトレーにセットして、喫食直前に再加熱して提供する調理・保存法です。
「患者さんに温かい食事を提供したいというのが私たちの願いでした。旧本館は設備面での制約があったため、作りたての料理を熱いうちに断熱材入りの保温食器に急いで盛り付けるなど、現場の工夫と多くの労力で適温給食を維持してきました。ただ、食数が非常に多く、食事が冷めやすい冬に適温を維持するのは容易ではありませんでした。ニュークックチルシステムを導入し、再加熱カートで食事を運ぶ仕組みにしたことで、作りたてに近い、アツアツとも言える温度で食事を提供できるようになりました」と、福岡大学病院栄養部の倉橋操技師長はおっしゃいます。
安全とともに、働きやすさを追求
ニュークックチルシステムは、食中毒の発生リスクを低減させた、安全なオペレーションが継続的に実践できていることを前提としたシステムです。このため、福岡大学病院の新本館厨房は、HACCPにもとづいた高い衛生管理レベルの厨房となっています。ただ、それだけではありません。作業効率を高める設計や機器を採用し、調理に携わる方々の働きやすさも追求している点が大きな特徴です。
- 食器類の消毒保管庫。温度や時間を設定してスイッチを入れるだけで消毒まで完了します。安全に関わる設備としては、温度管理システム「キッチンリンク」もご採用いただいています
例えば、交差汚染を防ぐ観点から、食品や機器類の流れは、原則として一方通行とし、汚染度が異なるエリアでの食品や器具類の受け渡しは、パススルー式の設備を介して行います。常温の保管・受け渡し用にはパスボックス、冷蔵品の保管・受け渡しはパススルー式の冷蔵庫を設置しています。「乳児用のミルク作りに使った器具は、洗浄室とつながっているパスボックスを通じて洗浄室に受け渡しをしています。従来は洗浄室に入るためにスタッフが長い距離を移動して、洗浄室への入室時に靴を履き換える必要がありました。パスボックスを通じた受け渡しにより、作業動線が短くなっただけでなく、靴を履き替える手間もなくなりました」(倉橋技師長)。
- 常温の食材・機器類の保管・受け渡しに活用しているパスボックス(写真左)と、パススルー式冷蔵庫(写真右)。前後に扉があり、どちらからでも中に保管されている物品にアクセスできます
- 常温の食材・機器類の保管・受け渡しに活用しているパスボックス(写真上)と、パススルー式冷蔵庫(写真下)。前後に扉があり、どちらからでも中に保管されている物品にアクセスできます
また、食品や食器の運搬は、少人数で効率良く運搬できるよう、カートを積極的に採用しています。これに対応するために、厨房機器のカスタマイズも行っています。コンビオーブンは、20段タイプを5台お使いいただいていますが、厚さ65mmのホテルパンをロールインカートごと出し入れできるように、庫内棚の間隔を通常よりも広げて、棚を16段に変更しています。「加熱後の食品をカートごと冷却機器に入れられるので、作業効率が高まります。現場の調理師たちも、出し入れがしやすく、使いやすいと言っています」(倉橋技師長)。
- コンビオーブンは20段タイプを16段に変更してお使いいただいています。1段にホテルパンを2枚差す仕様となっており、一度に32枚分ずつの加熱調理が可能です
ライスプロのご活用で
「調理師の負担が軽くなった」
もう一つ、調理機器で「あれはすごいですよね。現場の人たちが喜んでいます」(倉橋技師長)とご評価をいただいたのが、全自動立体炊飯機の「ライスプロ」です。炊き上がり時刻や炊き加減を設定すると、必要な量のお米を釜に自動で投入し、洗米から浸漬、炊き上げを自動で行います。最大6つの釜(1釜7kgまで)をセットでき、炊き上がり時刻を、4日先まで、1分単位で、1釜ずつ個別に設定できます。
「冬の水の冷たい時期に調理師が洗米をしなくていいですし、お米や水の計量からも解放されます。朝来たらご飯が炊けていますから、炊飯のために早朝に出勤しなくて済むようになりました。また、使う人に配慮した設計だと感じたのが、ご飯の取り出し口です。従来は3段式のガス炊飯器で炊いていて、下段にある釜は腰をかがめて持ち上げなければいけませんでした。これに対してライスプロは、炊き上がった釜が、腰に負担のかからない高さにある取り出し口に自動で移動してきます。身体的な負担が大きく軽減されました」(倉橋技師長)
- 炊飯にはライスプロをご採用いただきました。中央にある、縦にスリットが入った観音開きの扉から、ご飯の炊き上がった釜を取り出します
「さすがプロの仕事だと
感心しました」
新本館の計画が発表されたのは2017年。開院まで約7年間という長期にわたるプロジェクトでした。倉橋技師長に、竣工に至るまでのfujimak担当者の仕事ぶりについてお伺いしたところ、「施設の全体像が決まるまで、さまざまなパターンの図面を何度も引いていただきました。その際、現場の私たちの意見を最優先してプランに落とし込んでくださったのが、とても助かりました」とお話しくださいました。
「今回、すべての機器類を新調するのではなく、旧本館や中央棟の厨房から、加熱機器や調理台、棚などを新本館の厨房に移設しています。『これは部品交換することでまだ使えます』といった情報をfujimakの担当者からもらえたことが役に立ちました。移設した機器が、新しい機器と組み合わさって新本館の厨房にピッタリと収まっているのを見たときは、『さすがプロの仕事だ』と感心しました」(倉橋技師長)
安全で温かい食事を提供できる仕組みが動き出した現在、倉橋技師長は、食事の見た目や食味などに踏み込んで、現場の皆さんと一緒にニュークックチルシステムを活用したメニューのレベルアップに取り組んでおられるそうです。「下膳時に、トレーに『おいしかった』というメモを残してくださる患者さんもいるんですよ」と、食事提供にまつわるエピソードを披露いただいたときの嬉しそうな表情が印象的でした。
- 「今後も、治療に貢献する食事を患者さんに提供していきたいです」(倉橋技師長)
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