外国人マネジメントのプロが教える 転ばぬ先の外国人スタッフ&ゲスト対応術
第2回
外国人スタッフの採用&育成、
どこに注意すればよい?
前回は、外国人スタッフとのコニュニケーションについてのポイントをご説明しました。文化的な違いがあることを理解したうえで、指示は具体的に、納得できるように理由を伝える、という内容です。今回は、外国人スタッフの採用と育成に焦点を当てたお話を中心に解説をしたいと思います。
更新日:2020年02月20日
在留資格と資格外活動許可の有無などを確認
まず採用についてお伝えします。外国人スタッフの採用には、コンプライアンスの順守が第一です。必要な手続きを着実に踏んで、長く戦力として働いてもらえるようにしましょう。
外国人であっても、労働基準法や最低賃金法の遵守は必須です。労働契約も結ぶ必要があります。労災保険など社会保険への加入も必要です。そして、雇い入れ時には、在留カードの内容確認が欠かせません。
日本に滞在できる外国人には、氏名、生年月日、国籍などのほか、在留資格と在留期限が記載されている「在留カード」が発行されます。飲食店の場合、「留学」の在留資格で働く外国人を雇い入れることが圧倒的に多いのですが、留学の在留資格は本来、大学などで学ぶために日本での滞在を認めるものですから、報酬を得る労働をするためには、入国管理局から「資格外活動許可」を得る必要があります。申請をすると、問題がない限り、1週間に28時間以内を条件に活動が許可されるのが一般的です。採用時は、応募者がこの資格外活動許可を持っていることを確認しましょう。下の写真の赤丸をつけた部分が資格外活動許可に関する記述です。

雇用対策法では、事業主に対して、外国人の雇い入れと離職の度に、その外国人の氏名、在留資格、在留期間等を確認し、ハローワークへ届け出ることを義務付けています。インターネットでの電子申請も可能ですので、この届出を怠らないようにしてください。
※2019年4月の改正入国管理法で定められた新しい在留資格「特定技能」の業種には外食業も含まれますが、法務省の発表によると、2019年9月末現在で外食業の在留者は全国で20人にとどまりますので、今回は特定技能についての説明は割愛します。
モチベーションを高める方法を考える
縁あって採用した外国人スタッフには、在留資格が認められている期間内において、できるだけ長く活躍してもらえるように努めたいものです。そのためには、前回説明した内容以外にどのような点に気をつけるべきでしょうか。
まずは、働く店が「私たちの店」であると愛着を感じてもらうための動機付けが欠かせません。オーナーがどのような思いで店を開業したのか、どんな空間を提供したいのかを自分の言葉で語っていただきたいと思います。熱意は必ず伝わります。そのうえで、店の最高の価値はどこにあるのかを共有してください。「一番大切にしていること」と言い替えてもよいでしょう。「どんなときでも笑顔で対応する温かなサービス」「シェフが修業時代から研究していた看板メニューのハンバーグ」「写真に撮りたくなるような美しい盛り付け」などいろいろとあると思います。それらを外国人スタッフにも、お客様にご提供するその店ならではの価値として意識してもらい、誇りをもって厨房やホールに出てもらうのです。

釈迦に説法かもしれませんが、基本的な姿勢として、日本人スタッフと公平な扱いを徹底してください。失敗したときなどに、「だから〇〇人は...」といった差別的なニュアンスでの発言は厳に慎んでください。見下した態度をとられて、前向きな気持ちになる人はいません。「一度失敗したら、店長が自分にだけは話しかけてくれなくなった」「チーフの態度が冷たい。どうせ言っても通じないと思っている」といった不満は、店を辞める理由の上位です。
また、外国人スタッフの育成に関する、中間管理職を置くとよいでしょう。スタッフの人数が多い店舗の場合、オーナーや店長が、入店したばかりの外国人スタッフの働きぶりに気を配ることは難しいと思います。そこで、面倒見のよいベテランのスタッフを、外国人スタッフのサポート係に指名するのです。例えば、朝礼で店長が指示をした後に、「さっきの店長の話で分からないところはあった?」と声をかけ、分からないことに答えてあげれば、自分に目をかけてくれる人、頼れる人がいると感じて、外国人スタッフの不安は軽減されます。いずれ、日本人ではなく、日本語力が高く人格的にも優れた先輩の外国人スタッフにこの役割を任せることができれば、外国人スタッフの育成はより円滑に進むでしょう。
昇給、昇格の仕組みを明示する
制度面では、長く勤めることについてのインセンティブを用意しましょう。その一つが時給です。来日したばかりの留学生は、最初のアルバイト先に飲食店を選ぶケースが多くあります。洗い場などでは、あまり日本語が話せなくても務まるからです。しかし、日本に慣れて日本語を覚えると、見た目が華やかで、飲食店に比べると肉体的な負担が少なく見える、販売職やホテルなどにアルバイト先を変えてしまう留学生が少なからずいます。せっかく教育したのに、いつも「外国人スタッフが最初に働く店」のままでは、店側はまたゼロから採用と教育をやり直さないといけません。
これは先ほどのポイントとも関連しますが、仕事で要求する水準については、相手が納得できるように説明しないと、「やり直し」の繰り返しになってしまいます。「おもてなし」との言葉に象徴されるように、日本ではきめ細やかで行き届いたサービスが当たり前になっています。しかし、それが当たり前でない国や地域で育ち、暮らしてきた人にとっては、その細やかさは過剰に見えます。ですから、指示やルールの説明は、以下の例のように、「なぜそうするのか」の理由を一緒に伝えるように心がけてください。
ですので、「半年経ったら時給が30円アップ、2年目からは80円アップ」などと昇給の仕組みを雇い入れ時に伝え、長く勤めることのメリットをアピールしましょう。この時も、昇給の仕組みを日本人と変えないようにしてください。先ほどのサポート係のような特別な役割を担わせる場合は、その分、時給を加算すればよいと思います。

また、時給と連動したランク別の必要スキル一覧表などを用意しましょう。ランクに応じて名札の色が変わったり、職務の範囲が広がったりするなど、ステップアップを実感する仕組みがあると、成長を実感でき、仕事のやりがいが高まります。店の提供価値を知って愛着を感じたスタッフを教育し、一定の仕事を覚えたら、段階的な給与アップと職務の広がり、そして働き甲斐を提供することで、成長意欲を喚起し戦力化する、という流れです。
留学生は、高い費用を払って勉強をするために来日しており、もともと向上心や挑戦意欲の高い人たちです。また留学ができる人はアジアではそう多くなく、実際、日本への留学生は、出身国・地域では成績が優秀で、比較的裕福な家庭で育った人が多くいます。そのような留学生にとって、日本でのアルバイトは生活費を稼ぐ手段だけでなく、社会経験の機会という意味を持っています。「子どものころから日本のアニメを見て育った」というように、日本文化が好きなので留学先に日本を選んだという人が大勢います。その日本で仲間として迎えられ、働きながら日本の良さを深く理解し、自分の成長を実感できる場になれば、その外国人スタッフにとっては、あなたのお店が「長く働きたい、かけがえのない場所」になるはずです。
次回は、外国からのお客様を迎える場合のポイントを解説する予定です。
講師紹介
- 株式会社インディゴジャパン取締役会長
杉山秀一(すぎやま・しゅういち) - 外国人専門の人材マッチングとインバウンドソリューションを手掛ける、株式会社インディゴジャパン取締役会長。1978年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、株式会社丸井(現丸井グループ)入社。バイヤー、小田原店や渋谷店の副店長、新宿マルイワン初代店長、静岡店店長、総務部長、広報部長などを歴任。2016年、インディゴジャパンを設立、代表取締役社長。2019年6月より現職。2019年ホテレスJAPANインバウンドセミナー、(一社)ジャパンショッピングツーリズム協会・日本商工会議所共催 「オリパラ直前 訪日ゲストおもてなしセミナー」、日経BP「グローバル人材2018」セミナーなど、講師実績多数。
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